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第49回日本糖尿病学会の報告 

5月25日から3日間、「第49回日本糖尿病学会」が有楽町の東京国際ファオーラムで開かれました。糖尿病学会は一般演題(発表)が1,536題で参加者が約1万人という大規模な学会で、医師だけではなく、看護師、栄養士、臨床検査技師などの医療スタッフも多数参加するのが特徴です。当クリニックからは、私(院長)、管理栄養士の本部、難波の3人が参加しました。金曜日は午後を休診にしてご迷惑をおかけしましたが、勉強してきたことをこれからの診療に生かしていきたいと思います。

1)  話題1:糖尿病の新薬の登場です

 糖尿病の治療薬には、飲み薬やインスリン注射があり、これらの薬で血糖がコントロールされる方もいらっしゃいますが、半数以上の方が「空腹時血糖110mg/dl未満」、「食後血糖180mg/dl未満」、「HbA1c 6.5%未満」の目標を達成することができません。これは、食事・運動などの生活習慣の改善が難しいためでもありますが、薬の効果が十分でないことも一因です。

 十二指腸で作られすい臓に働いてインスリンの分泌を促進するGLP-1というホルモンがあります。このホルモンは注射しても数分で体から消えてしまうため、糖尿病の治療には使えません。しかし、最近、このホルモンの構造を少し変えて、体の中での分解を遅くした薬が開発されました。これは「リラグルチド」という舌を噛みそうな名前の薬ですが、1日1回注射することにより、空腹時と食後の血糖が低下し、14週の治療でHbA1cは1.5~2%下がりました。インスリン注射では体重は増えますが、体重が減る(1.5~2 kg)のがこの薬の特徴です。さらに、低血糖にならずにインスリン分泌のパターンを正常にすることが明らかになっています。副作用としては、投与開始後に吐き気などがみられますが、次第に慣れるようです。この注射薬は数年以内に、承認される可能性があります。

 2)話題2:糖尿病は早めに見つけて動脈硬化を予防しましょう

 HbA1c(ヘモグロビン、グリコヘモグロビン)は、血糖値の1〜2ヶ月間の平均値です。正常値の上限は5.8%とされていますが、5.5%を超えると糖尿病あるいは境界型の可能性があります。糖尿病では、境界型であっても心筋梗塞や脳梗塞など血管が詰まる病気(動脈硬化性疾患)の危険性が高くなることがわかっています。

 ◇空腹時血糖 104mg/dl以上

 ◇HbA1c 5.5%以上

 ◇高脂血症(特に中性脂肪)、高血圧の太り気味(ウエストが太め)の方

健診や人間ドックで上記に相当する方は、精密糖負荷試験(ブドウ糖75gをのんだ後、血糖を3回測定)を行って、糖尿病や境界型(予備軍)ではないかどうか、一度は調べたほうがいいでしょう。

 

平成18年5月30日

今城内科クリニック