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第11回糖尿病教室

第11回糖尿病教室:

動脈硬化の検査「糖尿病は血管病です。血管の状態を知り、余病を防ぎましょう」

1) 動脈硬化とは:動脈の壁にコレステロールが溜まり、血管の細胞が増殖したりして、血管が硬くもろくなり、内腔が狭くなる、いわば「血管が劣化した」状態です。

2) 動脈硬化は無症状で進行します:動脈硬化の病気は、①脳の血管=脳梗塞、②心臓の血管(冠動脈)=心筋梗塞・狭心症、③下肢の血管=閉塞性動脈硬化症、の3つが代表ですが、いずれの病気も血管がかなり細くなったり、完全に詰まるまでは無症状です。わが国では、脳血管病による死亡は1970年以降減少していますが、これは脳出血が減っているからであり、血管が詰まる脳梗塞は逆に増えています。

3) 動脈硬化を調べる検査:血管造影検査、マルチスライスCT(3D)、MRAなどで、血管の細かな異常までわかります。しかし、これらは大掛かりで高額な器械であり、大病院でないと検査できません。

4) 頚動脈エコー検査:超音波を使って首の動脈(頚動脈)の断面を観察します。この検査では、動脈硬化性のわずかな変化(IMTの肥厚とプラーク)=“兆し”をも見ることができます。

5) 内膜・中膜複合体(IMT):血管の壁は内膜、中膜、外膜の3層からなります。内膜から外膜までの厚さ=IMTは、動脈硬化が進行すると厚くなってきます。この厚みが正常者よりも0.3mm厚くなると、心筋梗塞や脳卒中の発症頻度が約5倍となります。

6) 動脈の壁の盛り上がり(プラーク)の検出:頚動脈エコーでは、プラークも簡単に検出できます。プラークが破れて血栓ができると血管は詰まるのですが、エコーでは破れやすいプラークか、破れず安定なプラークかといった、詰まる危険性も判断できます。

7) 糖尿病では動脈硬化は進展します:高血糖は血管の内側の細胞(内皮細胞)を障害し、糖尿病に合併する脂質代謝異常は動脈硬化を進めます。糖尿病では、正常者に比べてIMTが厚く、50歳で基準範囲である1.1mmを超えます。

8) フォルムPWV/ABI:腕と足の血圧を比較して、足の動脈のつまり具合と血管の弾力性を同時に検査する器械です。血圧は腕よりも足のほうが高く、足と腕の血圧の比(ABI)が0.9以下なら、足の血管が細くなっている可能性があります(閉塞性動脈硬化症:ASO)。

9) 脈波伝播速度(PWV):動脈の中を拍動(脈波)が伝わる速度(cm/秒)を測ることにより、血管の弾力性を判断できます。硬い血管は、土管のように周りが硬くなっているため、脈が血管の壁で吸収されず、スピードは早くなります。一方、柔らかい血管はゴムチューブのように弾力性があるため、脈波が血管壁で吸収されて、スピードが遅くなります。PWVは年齢とともに高くなりますが、1400cm/秒を超えると、血管がやや硬い可能性があります。

10)         動脈硬化はある程度戻ります:血圧、血糖、脂質などの動脈硬化の危険因子を低下させることにより、IMTやPWVは低下することが明らかとなっています。

11)         動脈硬化は予防が大事です:頚動脈エコーと脈波検査で血管の状態を知り、動脈硬化の危険因子を一つでも減らすことにより脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症を予防しましょう(1次予防)。不幸にもこれらの病気を起こしてしまった方は、動脈硬化の危険因子を減らして再発を予防しましょう(2次予防)。

 

 

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