ブログ

糖尿病の合併症(3)腎症

第15回糖尿病教室

糖尿病の合併症(3)糖尿病性腎症ー透析にならないために-

1) 糖尿病性腎症による透析の導入患者数は年々増加しています:糖尿病性腎症のために新たに透析を受けるようになる方は、毎年約3万人を越え、1998年以降は慢性糸球体腎炎の方を越えて第1位となっています(2003年の統計では41.0%)。

2) 腎臓の働き:

①    老廃物の排泄:腎臓では尿を作って、人体に不要なものを尿として捨てています。

②    体液の調節:過剰にとった水分や塩分を排泄し、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質のバランスを保っています。

③    血圧の調節:レニンという血圧を調節するタンパク質を作っています。腎臓の機能が低下すると血圧は上がります=腎性貧血。

④    赤血球を増やす:腎臓では赤血球を増やすエリスロポイエチンというホルモンを作っています。腎臓の機能が低下すると赤血球が減少して貧血になります=腎性貧血。

⑤    ビタミンDを活性化して骨を丈夫に。

3) 腎臓は血管がとても多い臓器です:腎臓には血液から老廃物をこして尿を作る糸球体が約100万個あります。糸球体は血管が球状に集まった構造をしており、いわば血管の塊です。

4) 糖尿病性腎症とは?:血糖が高くなると、細かい血管の集まりである糸球体が傷害されます。糖尿病の30-40%の方だけが腎症になるので、腎症になりやすい何らかの遺伝因子があると考えられています。

5) 糖尿病と血圧の関係:糖尿病患者さんの約60%は血圧が高めです。血圧が高いほど腎症になりやすいことが明らかになっています。数千人の糖尿病患者さんの追跡調査(JDCS)では、①血圧(140以上)、②中性脂肪、③体重、④HbA1c、が腎症の危険因子であると発表されています。

6) 尿糖は腎機能を反映しません:血糖が160~170mg/dlを超えると、越えた分が尿糖として尿に出てきます。これは腎臓の機能とは関連しませんし、腎機能が低下すると尿糖はかえって少なくなることもあるので、尿糖は腎臓の機能を調べる検査ではありません。

7) 糖尿病性腎症の病期分類

①    1期(正常):尿のアルブミン排泄が基準範囲内:30mg/gCr以下

②    2期(早期腎症):尿のアルブミン排泄が30~300mg/gCr、尿蛋白は試験紙法で(-)

③    3期(顕性腎症):尿蛋白が陽性、腎機能低下

④    4期(腎不全):血液中のクレアチニン値が上昇

⑤    5期(透析)

8) 尿蛋白陰性でも腎症のことがあります:健診、人間ドック、一般の外来での尿検査はすべて試験紙法で尿蛋白を調べています。試験紙法では、尿のアルブミン排泄が300mg/gCrを越えて初めて尿蛋白が陽性となりますが、尿のアルブミンが30〜300mg/gCrの時期でも腎臓は既に障害されてます。糖尿病の方は、普通の尿蛋白検査だけではなく、尿アルブミン検査を受ける必要があります。

9) 糖尿病腎症3期(顕性腎症期):尿検査でいつも蛋白が(+)の時期で、腎臓はかなり障害されているため、元に戻すのは難しくなっています。ですから、糖尿病腎症はこれよりも早い時期、つまり早期腎症の時期から治療を始めなければなりません。

10)         尿蛋白が陽性でも糖尿病性腎症ではないこともあります:尿蛋白が陽性でも網膜症が全く認められない方や、尿に血液がいつも混じる方は、糖尿病性腎症ではなく、慢性糸球体腎炎や高血圧による腎硬化症の可能性もあるので、腎臓の専門医に診てもらうことをお勧めします。

11)         腎臓の働きが低下したら食事中のタンパク質を制限する必要があります:腎症3期で腎機能が低下している場合や(3B期)、腎不全期(4期)になると、タンパク質の摂りすぎは腎臓に負担をかけて、血液中に老廃物がたまりますので、食事中の蛋白質を制限します。

12)         糖尿病腎症5期(透析期):血中のクレアチニンが8mg/dl以上、むくみが強い、尿の量が少ない、など腎臓の機能がかなり低下したときには、透析で血液中の老廃物を除去する必要があります。

13)         糖尿病腎症から透析にならないために:早期発見・早期治療で腎症の進行は防げます。尿ではアルブミン検査、血液ではクレアチニンの検査が重要です。

14)         腎症を防ぐポイント:

①    血圧を130/80以下に

②    腎症進展予防薬を使う:ACEIやARBといった薬には、尿アルブミン排泄を減らして腎症の進行を抑える効果があります。

③    塩分制限:1日6-7g以下

④    血糖コントロールをよくする:HbA1cは6.5%以下、できれば5.8%以下に

⑤    コレステロールや中性脂肪を下げる。

以上の治療により、蛋白尿が陰性になったり、尿アルブミンを減らすことが期待できます!

15)糖尿病性腎症が進行してしまえば(3Bから4期)、先の①から⑤に加えて蛋白質を制限します。

16)糖尿病腎症を悪化させる要因を取り除きましょう:膀胱炎では細菌が膀胱から腎臓に入って、腎臓の働きを悪くすることがあります。特に、女性の方は、尿検査を時々受けて膀胱炎があれば、早めに抗菌剤の治療を受けましょう。また、下痢や嘔吐、発熱などで脱水になると、腎臓の機能は低下します。このような場合には、水分を十分に摂ってください。吐き気などで水分が摂れないときは、点滴で水分を補給してもらいましょう。

診療のご案内へ

今城内科クリニック